なぜソニーが「アロマディフューザー」を作ったのか?

なぜソニーが「アロマディフューザー」を作ったのか?

ソニーの「新規事業創出プログラム(Seed Acceleration Program:SAP)」という社内スタートアップによって製品化されたのが、パーソナルアロマディフューザーの「AROMASTIC」です。プロジェクトリーダーの藤田修二さんは、新機能材料やバイオ燃料電池の研究者だった異色の経歴の持ち主。なぜソニーが「嗅覚に訴える製品」を作ったのかについて伺いました。

ソニーの新規事業でも異色な「初めての”香り”関連製品」

ソニーの新規事業でも異色な「初めての”香り”関連製品」

「AROMASTIC」は、5種類の香りを持ち運べるカートリッジ式のパーソナルアロマディフューザーです。手のひらサイズの円筒形のスティックは片手で操作できるスマートなデザインにしました。ポーチやバッグからサッと取り出して、時間や場所にとらわれずに、香りでリフレッシュしてもらうことを意識したプロダクトです。日本でも人気の英国「ニールズヤード レメディーズ」の全面的な協力のもと、用途や好みに応じてセレクトが可能な5つのカートリッジをラインナップしています。また、今後は加藤ミリヤさんなど、タレントの方とコラボレーションしたカートリッジなどもリリースしていく予定です。

プレゼンで使った「ソニー設立趣意書」の言葉

プレゼンで使った「ソニー設立趣意書」の言葉

SAPの社内オーディションを勝ち抜くための「決め言葉」ですか? どこが決め手になったかはわかりませんが、ソニー創業者の井深大氏が1946年1月に書いた、東京通信工業株式会社設立趣意書にある「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」に続く「日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動」という言葉をプレゼンテーションの最後に大きな文字で掲げました。文化向上とは「ライフスタイルを作り出す」という意味と捉え、ウォークマンのような、世の中にインパクトを与えるものを作りたいという意識を表現したかったからです。それはソニーがやってきたこと。ソニーとしてのコンテクストを取り戻すということです。選考を突破できたのは嬉しかったですね。

ソニーの国内工場のインフラ整備には困難はなかったか?

ソニーの国内工場のインフラ整備には困難はなかったか?

私がソニーに入ったのは、製品を出す会社に憧れがあったからです。お客様の手に触れる最終製品を作り出すことで社会とつながることができる。そういう歴史を作ってきた会社であり、実体が残るものを私も作りたかったのです。
実際のモノづくりの段階では困難がありました。ソニーでは香りを使った電化製品を作ったことがなかったからです。扱ったことのない製品ですから、品質をどう担保するかについては相当の議論がありました。ソニーの名前で出す以上は、ソニーのクオリティに達していなければいけません。ただ、未知の製品であっても、やり切れる力があるのがソニーです。例えば品質検査は、社内の内部試験を通った担当者が、評価試験を行っています。香りを測定する検査機の中で最も高精度といわれている機材よりも、人間の鼻の方が現在でも優秀だからです。「とりあえず出しておけばいいじゃない」ではなく、いいモノを作るために、相当の覚悟で挑み続けているのがソニーです。
また、「AROMASTIC」のプロジェクトでは、3Dプリンターによる量産装置をゼロから作るという、ソニーとしても前代未聞のやり方をしています。当初は製造スタッフからも「現実的ではない」と反対されたのですが、相当にハードなスケジュールだったにも関わらず、最終的にはなんとか形にすることができました。つくづく、ソニーにはものづくりのプロフェッショナルが揃っていると感じます。

香りをどう長時間持続させるか

香りをどう長時間持続させるか

製品における技術的な難しさもありました。一つは、香りをどうやって長時間持続させるかという点。二つ目は、複数の香りをどうやってコンパクトなサイズに収めることができるかです。
また、マーケティング調査で、既存のアロマディフューザーは面倒だという声がありました。シンプルかつ扱いが簡単なもの。そして、水や熱を使わない方法にするべきだという結論になりました。
そこで、熱を使わずに香りを届ける「ドライエアー方式(気体放散方式)」を採用して、周囲に香りを拡散させることなくフレッシュな香りをパーソナルに楽しめるようにしました。
後編に続く>>

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藤田修二

PROFILE

藤田修二(ふじたしゅうじ) ソニー株式会社 新規事業創出部 OE事業室 統括課長/AROMASTICプロジェクトリーダー 。1980年、宮城県生まれ。2009年東京大学医科学研究所にて博士取得後、ソニー入社。研究所にて新機能材料研究に従事。2012年より米ハーバード大に留学。帰国後、嗅覚シグナルのVR応用可能性と流路技術からAROMASTICを発想。

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